赤ずきんくん
赤ずきんくんは言いました
「キミの耳は大きいんだね」
するとオオカミが言いました。
「そうとも。人間どもの足音が、よく聞こえる様にね」
「それと、目が大きくて光っているんだね」
「人間どもの銃口に素早く気づけるようにね」
「それに、手も大きい」
「そうだよ。猟師から速く逃げなくちゃいけないからね」
「それから、その大きなお口!」
「そうとも。大きくなくては、人間どもに……」
「……人間どもに?」
「オオカミを襲うのはやめろ、と叫べないからね」
「あれ? オオカミが人間を襲うんじゃなくって?」
「まさか! 縄張りを荒らされて威嚇したことくらいはあるさ。でも考えて。ぼくらが積極的に人間を食べたことって、あったと思う?」
「そういえば『危ないから気をつけろ』って言われるばかりで、本当に襲われたことはなかったかも」
「だろう? 迷惑な話だよ。ウソをついてると3回目にはオオカミに襲われるとかさ」
「迷信だね」
「迷信だよ」
「他にも言いたいことはあるかい、オオカミくん?」
オオカミは視線を少しはずし、うたた寝するおばあさんを見つめたあと、こう答えました。
「山を切り拓いて、オオカミのすみかを荒らさないでほしいな」
「そっか。山に侵略して荒らしてるのは人間のほうだぞ、と」
「相手の立場になって考えれば、わかることなのになぁ」
「みんな自分中心にしか物事を考えないのさ」
「勘弁してほしいよ」
「今度、猟師にあったら叱っておくよ」
「よろしく」
「うん」
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